「あ、、」
偶然だ、
本当に偶然。
各国が集まり、今後の地球について考える世界会議。
会場は世界各地を転々としていて、
会議が終われば、俺を観光気分にさせる。
ここでは美味いものが食べれると聞いて、
都心外れの飲食店に足を踏み入れたんだけど、
ちょっとタイミングを間違えたみたいだった。
おかしいな、俺はヒーローなのに。
そこに座っていたのは大きな白熊…氷の皇帝。
目立ったプラチナブロンドの髪とアメジストの瞳。
「あ、アルフレッドくん。」
それ以上は言わないでくれないか。
「キミにあうなんて運命?」
oh…
この世に神様はいないのかい?
「それはキミの家のジョークかい、イヴァン。
偶然に決まってるじゃないか。」
「良かった〜僕もそうだと思ったから。
運命だったら吐き気がするよね。」
キミの吐き気はその目の前に並べられたウォトカのせいだとおもうぞ。
そう悪態を付こうとした。
「……。」
「なに?」
何て言うか、これだから嫌だ。
「それは、無意識かい?」
質が悪い。
アルコールによって色づいた肌はほんのりピンク色で、、
つまり、、、目のやりどころに困る。
「意味解んないよ。変なアルフレッドくん。」
「ハハハ…変だよな、そぅ、今の俺は変だ。」
いつもは白磁器のその色に目を奪われるが…
キミはずるい。
「俺にもウォトカとやらをくれるかい?」
誤魔化すように彼のとなりに腰を掛け、
その手に握られた瓶を指差した。
するとイヴァンは頬をぷくっと膨らまし、嫌そうな顔をした。
「そんな顔をするなよな、キミは笑っている方が可愛いぞ」
「アルくんが今日の呑み代おごってくれるならあげるよ」
な…その代償大きすぎやしないかい?
俺が白くなって固まっていると右手には知らぬ間にグラスが握らされていた。
「でわ〜今後の僕らの繁栄に乾杯。」
かちん。
小さなグラスが音をたてて揺れた。
イヴァンは中身を一気に飲み干すとさらに瓶から継ぎ足した。
俺もそれに続いて一気に飲み干す。
焼けるような痛みが喉を通り、
その液体が胃に落ちるのがはっきりとわかった。
「な…なんだい!?コレはっ!!!」
「すごくおいしいでしょ?なんてったって僕の燃料だもん。」
フフフと笑うイヴァンが可愛い。
普段俺はこんな風に思わないんだぞ!
コレはまるで…俺はどうかしている!!
「ほらほら今日はキミのおごりなんだから飲んでよ」
「イヴァン、今日はキミがいけないんだぞ!」
そう断り、
のぞきこんできたイヴァンの唇に噛みついた。
「や…」
彼が逃げようとするもんだから、
頭をひっ掴みテーブルに押しつける。
何度も何度も舌を絡めて掻き乱し、
口にあきたら、首に巻かれたマフラーを緩めて、
色づいた肌に鬱血の痕を付けた。
「ダメ…やだぁ…」
その声が俺を挑発することを解ってない。
シャツのボタンに手をかけた所で止められた。
「アルくん。ココお店だよ。」
我に返ると目の前には乱れたイヴァン。
金の睫毛の上には涙の玉が乗っていた。
「あ…」
マズイことをした。
青くなる俺を見てイヴァンは唇を舐めた。
濡れた赤がチラリと見えてそれは誘っている様…
「続きはあとでにしてね。」
そんなキミ、すきだよ。
甘い蜜のような声が鼓膜を揺らした。
グラスに注がれた水は媚薬。
一口飲めば熱が廻り夢中になって貪ってしまう。
まさにキミもウォトカの様だ。
その仕草、視線に射ぬかれたら、
頭が働かなくなってしまう。
「やっぱりキミは危険だよ。」
呟いて、その水を飲み干した。
(俺とキミは、偶然ではなく運命で繋がれてるんだろうな。
悔しいけど認めるよ神様。)