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『誕生日の次の日』
SIDE :仏露



甘い甘い一夜を越え、重たい瞼を開けば、

隣に恋人は居らず。

あぁ…とため息を漏らせば、

キッチンから、甘いハチミツの香りが漂ってきた。


「イヴァー…ンちゃん」


「なぁに」


名前を呼べば丸みのある柔らかい声が返ってくる。

幸せ…だけど起こしには来てくれないのね(^^;

お兄さんまだ誕生日気分だったみたい。

ノソノソとベッドから這い出て、

キッチンに向かえば、、


「イヴァンさん…これ、なんてちびく○さんぼ?」


沢山のホットケーキが皿に積まれていた。


「へへっ、僕のマイブーム、ホットケーキだよ」


たっぷりのハチミツをかけて召し上がれ!




…なんてヘビーな朝食。




「沢山あるから足りなかったら言ってね」


ちゅっと俺の頬に口づけすると

イヴァンは足早に己の荷物の方へ向かっていった。


「どうしたんだ?」


そう問うとにっこりとしたいつもの笑顔が返ってきた。


「ガルモーシカ。持ってきたんだ。」


イヴァンは俺の向かいの席に座り演奏を始めた。

ロシア語で綴られる歌詞の意味は解らなかったが、

軽快な指使いから流れるメロディは楽しげであり、

しかしどこか哀しげでもあった。


(たまにはこんな朝も良いか…)


甘いホットケーキを口に含みイヴァンの歌に耳を傾ける。


騒々しくも穏やかな朝が温かく感じた。


「誕生日が一年に一度なんて残念だな。」


「…イヴァン?」


伏せた瞳で感情を汲み取れなかった。


「そんな歌だよ。」


そういって笑う。

あんまり哀しそうに笑うもんだから、

お兄さん、またイヴァンさんを可愛いと思ってしまったよ。


「また来年、イヴァンは祝ってくれるんだろ?」


微笑み返し、バチンっとウィンクをする。

イヴァンはふふっと吹き出し、それからまた軽快にメロディを奏で出した。


「来年も、フランシスくんの誕生日が素敵な一日になりますように。」


「イヴァンさんが居ればお兄さん、いつだって素敵な一日だよ」


「またまたぁ〜」


結構本気だった愛の言葉は軽く流されたが、

ガルモーシカを演奏するイヴァンの頬は仄かに赤くなっていた。







誕生日が1年に1回だけなんて


そんな風に言わないで。

あなたがいれば、いつだって特別なのだから。




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