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『なんと甘美なことでしょう』
SIDE :米露
アルフレッドが家に来た。
最近、彼の国とは仲が良い。
まぁ…表面上だけだけど。
水面下で色々しているのはお互い様で、、今日は珍しく彼の方から僕の所へ遊び
に来たのである。
「キミは本当に甘いものが好きだな!!」
ホカホカの紅茶にりんごジャムを落としクルクルとかき混ぜる。
りんごの甘い香りと紅茶の芳しい匂いが混ざり合って何と言う幸せ!!
僕は肺一杯に息を吸い込み、それからはぁ、と息をついた。
「アルくんみたいに甘ければ何でも良いって訳じゃないけどね。」
「ハハハっ!!その皮肉はイギリス風かい?」
アルフレッドは座った椅子が倒れてしまうのではないかと言うくらい笑いころげ
た。
僕は好感を持つ訳でもなく、かといって不快に感じる事もなく彼を見つめた。
(でも…)
キミはそうでなくちゃとも思う。
力押しのその性格、嫌いじゃない。
むしろ、その大きく空いた口に熱々のケトルをブチ込みたいくらい好きだったりする。
僕は彼をぼんやりと見つめながら再びジャムを紅茶の中に投入した。
「なぁ、イヴァン。」
笑うのに飽きたのか、アルフレッドは真剣な顔をして僕の腕を掴んだ。
クルクルと紅茶をかき混ぜる腕がとまる。
「………。なに。」
「こんなに甘いものを取って居るのだからさぞかしキミ自身も甘いんだろうな。
」
その血液、粘液さえもすべて。
彼はそう言った。
「だとしたら、アルくんは僕を食べちゃうのかな?」
僕はふっふっと抑えきれない笑いをこらえてアルフレッドの手をほどいた。
腹の底では獲物を狙う獣の眼をしているくせに、無邪気なフリをして邪のある心を隠している。
僕にとってこんなに滑稽なことはない。
「味見させてくれるのかい?」
「そんなわけないでしょ…」
言いかけた僕の口にアルフレッドは黄金のティースプーンを無理やりねじ込んできた。
口内には甘いりんごの味。
「むぐっ…」
度の過ぎるイタズラは怒るよ。
言いかけて塞がれた。
口に入りきらず、ながれたジャムは彼に舐め取られる。
薄く開いた口に素早く舌が侵入してきて、僕は一瞬思考が真っ白にはじけ飛んだ。
「…ん…ぅう…」
どうしよう。
甘くてとろけそう…。
「うん!やっぱりイヴァンは甘いな!!!」
僕の口端から溢れたどちらともつかない唾液を舌で掬い、アルフレッドは僕の鼻先に軽いキスを落とした。
あぁ…
どうしようもない。
呆然とする僕。
それを見てアルフレッドはまた大きな口を開けて笑った。
「イヴァン、俺は君が嫌いな訳じゃないんだ!!!」
それはどうも。
僕も同感だと思うよ。
そして彼は僕の耳元で呟いた。
「あいしているよ」
…っ!!!
明らかに顔が熱くなるのを感じた。
僕のこの恥ずかしい気持ちを知ってか知らずか、アルフレットは立ち上がり、
この土地に似合わないほど薄手のコートを羽織った。
帰るのだろう、彼も暇じゃない。
「御馳走様イヴァン。また来るよBye!」
そう、僕も君のこと嫌いじゃない。
ただ根本的に合わないだけ。
「『あいしているよ』…笑わせてくれるよね。」
だって君の憧れであるヒーローというものは
全員に愛を注ぐものでしょ?
そんな安物…
「必要だとおもってる?」
あーっ!!
やっぱり、、、僕は君のコト
熱々のケトルをブチ込みたいくらい好き!!!
僕は座った椅子が倒れてしまうのではないかと言うくらい笑いころげた。
口に含んだ紅茶はとても甘いりんごの味がした。
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